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INTRODUCTION
芝・大本山増上寺を舞台に繰り広げられた
一大ものづくり祭「天祭一〇八」(2013〜2016 全6回)。
「越境」を標榜する催しのシンボルとなった
漫画『へうげもの』(2005〜2017 山田芳裕 講談社)。
二つの契機によって舞踏と茶の湯が出逢い、「天祭」における未曾有のセッションが実現した。
身体表現と伝統文化の融合をさらに深めるべく、目黒の古刹「蟠龍寺」へと場を移し、
「芸術」の新たな地平を切り拓く。
BIG BANG RYUJIへ愛をこめて
企画相談係 藤沢学
CONCEPT
茶の湯と舞踏、融合と越境
日本文化の一つの象徴である茶の湯は、古くは大陸に起源を持ち、国内においては千利休によって大成され、爾来受け継がれ続けている伝統、美しい作法、空間の侘び寂びまでお茶とともに味わう心など、世界中の方々の関心を集めています。
一方では約束事も多く、敷居が高いと感じられている領域でもあります。
この度ご出演頂く茶人 松村宗亮氏は、伝統の文脈を修めながらも、「茶の湯をもっと自由に」というテーマを掲げ、現代にあった茶の湯の形を提唱し続けている、今最も注目されている茶人の一人です。
今回の会場である蟠龍寺は、増上寺で開催されていた天祭一〇八実行委員の一人である吉田の自坊であり、1648年に開創した浄土宗寺院です。
境内に山手七福神の中で芸能・芸術などを司る辯才天を祀っています。吉田は増上寺退職後も定期的にイベント/ワークショップを自坊にて手がけており、表現を媒介とし、幅広い世代・ジャンルの人と人が結びつく場として、お寺を再定義しています。
また音楽を担当する友光雅臣師は、天台宗の僧侶として品川の古刹常行寺にて法務を務める傍ら、現在の寺社による文化活動の先駆けとなった、寺社フェス「向源」の主宰であり、同時に多数のクライアントワークをこなすDJでもあります。今回は自らの表現として、仏教という同じバックグラウンドを持つ場で、舞踏家と茶人を載せる器としての音を紡ぎます。
今回の公演は、蟠龍寺本尊の目の前という日常から切り離された場所に、さらに茶の湯、舞踏を加えるという今までにない表現形態をとり、ひと時の非日常からつながる、日常への問いを含むものです。
舞踏は全身を白く塗り個性を消して「無」になることで新たな世界を構築します。
脈々と続く「茶の湯」の文化に代表される「日本の伝統」を見つめなおし、寺という場で、茶の湯の点前を守りながら、そこに舞踏の身体性を加えることで生まれる融合した表現によって、文化が花開く鮮やかな感動の再発見や、同時代性をもって再構築される美意識を目の当たりすると同時に、
眼前に表れている事象が我々の認識によってのみ成立しうるという、ある種の仏教的観点が日常へ還元される特別な時間を共有することとなるでしょう。
演者やお客様、それぞれの領域を越境した先が、今を生きる我々の失ったものを見出す端緒となることを願い、拙寺で公演開催いたします。
浄土宗蟠龍寺副住職 吉田 龍雄